仏壇を買って、木魚が必要と感じているあなたへ。
木魚は価格帯が広く、音も材質もそれぞれ違います。
買った後、後悔しないために基本だけでも知っておきましょう。
木魚を使う宗派について
木魚はすべての宗派で使うとは限りません。
使わないのは、
・浄土真宗本願寺派(お西)
・浄土真宗大谷派(お東)
などの浄土真宗系、そして
・日蓮宗
です。
故人が何宗か確認して、必要ならそろえましょう。
日蓮宗は木魚の代わりに木鉦(もくしょう)を使います。
「日蓮宗で使う木鉦とは」の項目でくわしく説明したいと思います。
木魚の種類は大きく分けて2つあります
簡単に分けると木のままの【木地木魚】か、塗ってある【朱塗木魚】の2種類です。
木地の材質によく使われるのは、
「白木(しらき)木魚」「楠(くす)木魚」「桑(くわ)木魚」の3つです。
黒檀、紫檀の木魚もありますが、流通量はごくわずかです。
白木(しらき)木魚
白木は主に、桂蘭(けいらん)という木を材料にしています。
桂蘭とは、メルサワとも呼ばれ、フタバガキ科の広葉樹です。
東南アジアに多く自生し、45mほどにも育つ大木。
色は黄色。
木魚の場合、桂蘭木魚とは言わず、【白木木魚】と表記してあります。
一番流通しており、価格も低く設定されています。
木地のまま使うので、個体により木目が多かったり、汚れのようなシミがあるものもあります。
自然のものなので仕方ないといえばそうなのですが、普及品の感は否めません。
どこまでが返品対象かは、お店の判断となりますので、気になる方は現物を手にとって購入することをオススメします。
ネットで買う方は注意が必要ですよ。
木魚のほとんどが海外からの輸入品となります。
音付けは国内の職人が丁寧にしているところもありますが、
音の良し悪しも確認せずに販売しているところもあります。
残念ですが・・・。
木魚の形のままでは音が響かず、ただ木を叩いているだけです。
そこで中の空洞を専用の道具で彫りすすめ、「木魚の音」が出るようにしていく工程です。
楠(くす)木魚
仏壇店に行き、「ちょっといい木魚ください」と言うと、この本楠木魚を勧められると思います。
木目もきれいで、シミ等もないものが多いです。
※画像は国産の楠木魚になります。
色は白木木魚より白っぽい色をしています。
きれいな木魚がほしい方にはいいかもしれません。
音は白木木魚とほぼ変わりません。
桑(くわ)木魚
桑木魚は高級品といっていいです。
こげ茶色に近い色をしています。
硬いので他の木魚より高音が出ます。
桑は大きく育つのに時間がかかります。
そのため、大きな木魚を作ろうと思うと何十年もかかります。
このようなことから桑の価格が高くなっています。
桑木魚は、国産のものしか見たことがありません。
朱塗木魚(しゅぬりもくぎょ)
朱塗木魚とは、朱色と黒色で塗り分けされ、一部に金箔を使用したものになります。
聞いた話では、木地のままでは使えない木魚を塗りに回しているとか・・・・。
真偽は不明です。
十数年前までは朱塗木魚の出荷が多かったそうですが、最近はめっきり数を減らしています。
考えられる理由として、
・おとなしい色を好む人が増えた。
この2点が大きな理由となりそうです。
彫りの装飾にも何種類かあります。
2匹の魚が左右対称に彫ってあります。
かなりデフォルメされているので、魚と言われてもわからないと思いますが。
【上彫】
並彫にもう少し加飾したもの。
【龍彫】
2匹の龍が左右対称にいて、1つの玉を咥えている姿の彫刻が施されています。
【鯱彫】
1匹の鯱が玉を咥えた姿が彫刻されています。名古屋城の金のしゃちほこみたいな姿です。
彫りの細工が細かいほど高額となります。
木魚の真ん中に彫ってある文字は屋号です
木魚の種類とは違いますが、
正面に、
「玉鱗」「玉鱗工」「玉鳳」「久洋」「玉斉」
などと文字が彫ってある木魚がたまにあります。
これは屋号のようなもので、どこの職人が彫ったものですよ、とわかるようにするためだったそうです。
ただ、現在「玉鱗」「玉鱗工」は誰でもが使っていいものとなっているそうで、屋号の意味合いはなくなっています。
有名なのは「玉斉」と彫る木魚。
これは名古屋市のとなり、一宮市で生産している最高級品木魚の証拠です。
「玉斉」の木魚を見つけたら気軽に持つのはやめましょう(笑)
5年ほど前に2尺2寸(約66センチ)の玉斉の木魚を見積もりしたことがあります。
芯持ちと芯去りで価格が違いましたが、どちらも何百万単位でした。
四捨五入するとどちらも1000万円です。
問屋の卸価格で、ですよ!
より大きな木を使わなければいけないので、芯持ちより高額になる。
日蓮宗で使う木鉦とは
丸い円柱をした形で、足が3本ついています。
材質は「欅」「桜」「花梨」「カエデ」などがありますが、「欅」が一般的です。
花梨は欅より硬く高音がでます。
木鉦バイという専用の道具で叩きます。
柄の部分が藤でできていて、頭は木の球体です。
木鉦バイで叩くと「カンッ カンッ」と高い音が出ます。
すごく響きますよ。
選ぶ際の木鉦のサイズですが、
仏壇の巾が60cm以上、背の高さが150cm以上でしたら、
5寸以上がいいでしょう。
上置き仏壇などの、一人でも持ち運べるような仏壇なら、
3.5寸か4寸でちょうどいいサイズかと思います。
下の項目でも述べていますが、木魚と同じ考え方です。
下に敷く6角畳は、木鉦の一回り大きいものを選びます。
「木鉦が4寸」なら「4.5寸の6角畳」という感じです。
6角畳ではなく、四角布団や丸布団を敷く地域もあります。
木魚はどう選ぶべきなのでしょうか?
まず、ご自宅の仏壇はどんな大きさ、どんな種類でしょう?
昔からある金仏壇であるのなら、どのタイプの木魚を選んでも問題ありません。
唐木(紫檀・黒檀・けやきなど)の仏壇なら、木地の木魚をおすすめます。
モダン仏壇にも、木地の木魚をおすすめします。
理由は似合うから。
ただそれだけですが、大事ですので。
大きさの基準は特にないのですが、今までの経験から言うと、
仏壇の巾が60cm以上、背の高さが150cm以上でしたら、
5寸以上がいいでしょう。
上置き仏壇などの、一人でも持ち運べるような仏壇なら、
3.5寸か4寸でちょうどいいサイズかと思います。
木魚は仏壇の中に入れるものではないので、大きさをそこまで気にすることはありません。
大きいと低音、小さいと高音が出るので、好みの音で選んでもいいでしょう。
木魚のサイズの測り方は横幅になります。
定規か巻尺を割れ目にくわえさせるようにすると測りやすいです。
彫りの種類は、好みで選んで問題ありません。
予算も大事になると思います。
特にこだわりがないのであれば、白木木魚の並彫にしましょう。
音も悪くありませんし、手に入れやすいです。
ただ、個人的には【白木木魚の上彫】がオススメです。理由はこちら。
「木魚のオススメは何?」という方に参考にしていただければと思います。5種類の木魚を比較してみますご存じのように、木魚にも材質の違いから、彫りの違いまで色々な種類があります。その中から、現在も流通していて、手に入れやすいも[…]
ここでいう悪い音というのは、
木魚が割れていたりして音が響かず、ゴッ、ゴッと木をたたく音しかしないことです。
誰でもすぐわかると思います。
あと、音の中に雑音のような音(ビリビリという変に響く音)が混ざることもあります。
言葉でうまく説明できなくてスミマセン。
木魚の音を聞いて決めたい人はどうするの?
その場合は仏壇店へ直接行って、叩かせてもらうしかないです。
同じ大きさ、材質、そして叩くバイや力加減でも個々で音が若干違ってきます。
木魚は修理できる?
木魚が割れたりして音が出ない場合、もう直らないと思っていますか?
そんなことはなく、直すことは可能です。
程度にもよりますが、通常使いをしていて急に音がおかしくなったのなら、直る可能性が高いです。
一度仏壇店に持っていきましょう。
後日、職人に見てもらい、判断してもらえるでしょう。
小さい木魚だと新品を買った時と同じくらいの見積もりが出るかもしれません。
しかし、大きい木魚なら直した方がお値打ちになることが多いです。
朱塗り木魚の表面の塗装がはがれてきた時も塗り直してもらえます。
修理の場合の注意点が一つ。
直す前と全く同じ音色にはならないことがあります。
そこだけは了承しておきましょう。
木魚を叩く棒の種類
藤柄バイ
糸巻藤柄バイ
樫バイ
朱塗木バイ
私の周囲では、木魚倍、略して木倍(もくばい)と呼んでいるので、「~バイ」と表記させてもらいます。※倍の字はただの当て字の可能性があります。
上記の種類がよく出回っている木バイです。
樫、朱塗、白木の木バイは柄の部分が棒状になるので耐久性があります。
ただ、重いので疲れる、といった声を聞きます。
木魚が朱塗りなら朱塗りのバイを使いましょう。
藤バイ、糸巻バイは、柄の部分に藤を使っており、「しなり」ます。
細いので耐久性は白木などに比べるとないですが、軽いです。
自然の木なので始めから曲がっているものもありますが、不良品ではないので安心してください。
藤バイの頭に糸を巻いて丈夫にしたものが糸巻バイです。
藤バイに比べて音がやさしくなります。
頭の皮には鹿皮を使っていますが、メーカーによっては違う動物を使ったり、
動物保護の観点から積極的にゴム製にしているメーカーもあります。
大きさの基準は「号」を使います。
4号(全長30cmくらい)から寺用の全長60cmくらいのものまであります。
号数が大きいほど頭の大きさも大きくなります。
木魚に合うバイの長さの決め方はお店によってまちまちですが、
私は、
木魚が「3.5寸の場合、4号」を、「5寸の木魚なら6号」と、
【木魚の寸法+1】(号)をオススメしています。
布団を使う意味
おりんと同じで木魚も下に布団を敷いて使います。
そのほうが音の伸びがいいからです。
あと、強く叩きすぎ、勢い余って転がっていくのを防ぐためです。
都布団、総金布団、弥生布団などが有名です。
布団の大きさの基準は、
木魚に対して約1.5倍の大きさの布団をオススメします。
例えば、「木魚が3.5寸なら布団は6号」、「木魚が5寸なら布団は8号」
といった感じです。
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木魚の由来(クイズで出るかも)
今更ですが、木魚の由来の話を少々したいと思います。
知ってると何かいいことがある、というわけではないのですが、
クイズ番組で問題に出るかもしれません。
よかったら読んでください。
昔の木魚は、字のごとく魚の形をした木の板でした。
「魚板」と言ったそうです。
お寺で使われ、打ち鳴らして時計のような役割をしていたそうです。
そのうち形が変わり、読経中のリズムとして叩くようになります。
魚は寝ている時も目を開けているので、
「読経中に居眠りせずにしっかり修業しなさい」と言う意味合いもあったとか。
まとめ
木魚を使わない宗派は、浄土真宗系(お西、お東など)と日蓮宗です。
日蓮宗は木鉦という仏具を使うので気をつけましょう。
木地のまま使うものと塗ったものがあります。
最近は木地のまま使う木魚が主流となっています。
彫刻にも種類があり、豪華になるほど値段も上がります。
現在、純国産の木魚を生産しているのは愛知県一宮市のみとなります。
国産品は海外品より価格は高いですが、品質、音は間違いありません。
予算があれば、国産品も検討しましょう。
音がしなくなった場合は修復も可能ですので、一度専門店へ持っていくといいですよ。
木魚は読経の時にリズム取りとして打ちます。
普段、自身で読経をしないなら必要はありません。
しかし、住職を呼んで法要をする場合、木魚がないのはまずいです。
用意しておくことをお勧めします。