御文箱(御文章箱)とは、その名のとおり御文(おふみ)を入れておく箱です。
浄土真宗本願寺派(お西)では「御文章箱(ごぶんしょうばこ)」と呼びます。
浄土真宗大谷派(お東)では呼び方が変わり、「御文箱(おふみばこ)」といいます。
表記が違いますが、使い方は一緒です。
お西とお東で呼び名が違うんだな~程度に思っておくだけで問題ありません。
深い意味はないと思います。
ここでは、深い意味は追求せず実用的な、【使い方】【種類】【置き場所】などの解説をしていこうと思います。
「御文箱は必要か?」
「そもそも御文は必要か?」
御文章箱は浄土真宗系のみが使います。
御文は、本願寺派の基礎を作った蓮如上人によって書かれた本(手紙)です。
御文(おふみ)は、浄土真宗本願寺八世蓮如が、その布教手段として全国の門徒へ消息として発信した仮名書きによる法語。本願寺派では「御文章(ごぶんしょう)」といい、大谷派では「御文」、興正派では「御勧章(ごかんしょう)」という。なお、本願寺が東西に分裂する以前は、「御文」と呼ばれていた。
蓮如の孫である圓如が、二百数十通の中から80通を選び五帖に編集した物を『五帖御文(ごじょう おふみ)』という。そのうち1帖目から4帖目には日付があるものを年代順にならべてあり、5帖目には日付が不明なものをまとめてある。そのため、4帖目の最後、第15通「大坂建立」は、蓮如の真筆では最後の御文。遺言ともいわれる。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
なので、浄土真宗系のみで御文が読まれ、御文箱に入れて保管しておきます。
「経本 御文 東用 中」
御文箱の紋
浄土真宗にはそれぞれ宗派が存在します。
なので宗紋もちがってきます。
代表的な宗紋を紹介します。
本願寺派(お西) 【下り藤と五七の桐】
大谷派(お東) 【抱き牡丹と八つ藤】
紋の位置
前面に小さい紋を二つ並べて描いてあるものもあります。
通常は平紋、上等なものは盛上げ紋
一般的な箱には平紋といって、紋をスクリーン印刷したものが多いです。
シルクスクリーン(Screen printing)は、孔版画の技法の一種であり、インクが通過する穴とインクが通過しないところを作ることで版画の版を製版し、印刷する技法である。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
型のない紋は一つ一つ手書きで対応しています。
手書きの時は本金粉を使うので、価格が高くなります。
上等な御文箱には盛上げ紋といって、紋が立体的に盛り上がった加工がされています。
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盛り上げ紋の一例
箱の材質
昔は木製のものしかありませんでしたが、今はより安価なプラスチック製や木質製といった材料が使われています。
プラスチック製の箱
仏壇を購入した時に仏具もセットで付いてくるときの御文箱はたいていプラスチック製のものになります。
よほどいい仏壇にした場合は木製をつけてくれるかもしれませんが、この判断は販売店によります。
木製
10年前と比べるとかなり価格が高騰してしまいました。
通常品と上等品があり、通常品は平紋、上等品は盛上げ紋になっています。
私の取引しているメーカーでは、箱自体の形もちがいます。
通常品はフタが平らなのに対し、上等品は盛り上がっています。
こういった一手間も上等品ならではです。
※本願寺派(お西)をお探しの方は【御文箱】を【御文章箱】に直して検索してみてください。
木質製
木質製とは、天然木を配合し、木そのものの質感などを活かした成形材料です。
天然木に樹脂を配合することで、耐久性、耐熱性にも優れ、仏具工芸品として適しています。
価格的にはプラスチック製と木製の中間に位置しています。
金粉ではなく、代用粉が使われています。
代用粉とは、銅と亜鉛を混ぜて金色の粉にしたものです。
金を使用していないので、何年かすると色が変色してしまいます。
金を使うより安価なため、色々な仏具、仏壇、位牌などに使用されています。
「木質製 御文箱 東用 中」
御文箱の大きさは2種類
御文箱の大きさは、「中」と「大」の2種類があります。
メーカーによっては「小」と「大」と表記しますが、同じ意味です。
実は、中に収める御文にも小さい本と大きい本があるので、そのサイズに合わせた箱があるというわけです。
では、
「御文や御文箱の大きさによる使い分けはあるのでしょうか?」
結論は、特に決まりはなく大きい仏壇には大きい本と箱、小さい仏壇には小さい本と箱を各仏壇店が勝手に決めています。
ちなみに、私の会社では30号以上の仏壇には「大」、それ以下は「中」をつけています。
なので最近は「大」を出荷することが少なくなりました。
仏壇の小型化の波が来ています。
※特別な御文箱(五帖箱)
御文は本来5冊から構成された本になります。
重要なところを編集して1冊にまとめてあるのが普段手にする御文です。
この正式な5冊を入れるための箱を「五帖箱」「五帖入り御文箱」と呼んでいます。
5段の引き出し付きの箱になっており、1冊ずつ引き出しにしまって保管します。
今では滅多にお目にかかれない仏具です。
昔の大きな仏壇には標準装備されていたらしいです。
みんなはどの箱を使っている?
ほとんどの方はプラスチック製を使っているようです。
仏壇購入時にセットでついてきたという方も多いです。
中には、箱を開けたこともない方もいます。
仏壇回収に行ったときに新品の状態で出てきたことがありました。
御文箱を置く場所
仏壇下部に引き戸があるので、その中にしまっておきます。
入らなければ、仏壇の横に置いておきます。
そんなスペースもないよ、という方はどこに置いてもいいですが、なるべく仏壇の近くに置くといいでしょう。
箱は使わず、御文の本だけを仏壇や経机の引き出しに入れている方もみえます。
ここだけの話「御文箱や御文、いる?」
仏具問屋に勤め始めて10年以上になりました。
私の会社では、金仏壇や唐木仏壇が売れた時には御文箱と御文を無条件で付けています。
お客さんが読む、読まないにかかわらずです。
金仏壇、唐木仏壇には御文箱を入れるスペースがあります。
ない場合でも、仏壇の横のちょっとしたすき間や仏壇の手前に置いたりします。
仏具は浄土真宗専用のものを付けますので、自然と御文箱や御文もその仏具に含まれます。
つまり、浄土真宗では御文を読むのが当たり前なのです。
しかし実際は、読まない人が大半です。
いきなり読めと言われても何が書いてあるかさっぱりわからないでしょう。
ありがたみもありません。
仏壇を購入する方の多くが、今まで浄土真宗とは無縁の生活を送ってきていたので無理もありません。
では、必要ないのか?というと、そういうわけでもありません。
せっかくの仏縁です。いつ読んでも構いません。
お坊さんだけが読むものと思われていますが、あなたが読んでもいいのです。
故人やご先祖様のために読むのではなく、あなた自身のために読むのが【御文】です。
要約したものがネットを探せば出てくるので、先にそれを読んでもいいでしょう。
http://www.ogaki-tv.ne.jp/~enshoji/houwa/hougo-ohumi1.html
本というよりお手紙をまとめたものなので、一つ一つは短い時間で読むことができます。
御文箱と御文を付けないのは、モダン仏壇や家具調仏壇と呼ばれている小型仏壇です。
「置き場所がないから小型仏壇にしたのに、御文箱って。」となるわけです。
なので、小型仏壇の時は、必要最低限の仏具に絞り、あとは個人的に買い足してもらうようにしています。
私の意見ですが、小型仏壇をお持ちの方は、箱は買わずに御文の本だけの購入をオススメします。
本だけなら仏壇の引き出しにも入りますし、本棚に入れておいてもいいでしょう。
「モダン仏壇だから御文はいらない」なんて言わずに、せっかく浄土真宗に触れる機会があるのですから、ちょっと手を伸ばしてみてはいかがでしょうか?
まとめ
御文箱とは、浄土真宗系が使う仏具です。
プラスチック製、木製、木質製があり、御文の本にあわせて2種類の大きさがあります。
宗派によって描かれている紋が違うので、ご自身の宗派に合わせた箱にしましょう。
モダン仏壇と言われる小型の仏壇に御文箱を付ける方は少ないですが、いらないわけではありません。
箱がいらないなら中身の本だけでも揃えておくと、いつか役に立つ日が来るかもしれません。