仏壇の価値は見た目ではわかりづらい、
というか、
『わかりません。』
特に金仏壇や唐木仏壇は、仏具問屋の私が見てもさっぱりわかりません。
彫刻が豪華だったり、蒔絵が立派など、一目でわかりやすければいいのですが、そういうものばかりではありません。
では、何が違うと値段が変わってくるかを解説したいと思います。
【材料】が違う(金仏壇の場合)
金仏壇の塗装には昔から漆(うるし)を使います。
ですが、最近の普及品にはカシュー塗料という代用漆を使用したものが増えてきました。
塗料の匂いは違いますが、見た目の肉厚感や光沢感は非常に似ています。
そして、漆の匂いを嗅いだことのない人には、どちらか判断できないと思います。
漆は原料が高価なのに対し、カシューは安く手に入れることができます。
さらに木材に何を使うかによっても価値が変わってきます。
通常、金仏壇にはヒノキ、ケヤキ、スギなどを乾燥させた木材が使われます。
しかし、より安価な圧縮ボード(MDF)という板が使われるようになりました。
このMDFは加工がしやすいため、仏壇以外にも家具などで使われています。
しかしデメリットもあります。
それは、強度が弱く、湿気にも弱いので、耐久年数が他の木材に比べると短い点です。
仏壇は毎日触ったり、動かすものではありませんが、経年劣化は避けられません。
塗りが痩せてきて、木地の木目がうっすら見えてきたり、金具が錆びてきたり、板が少し反っただけでも塗りに割れが発生します。
このような症状が早く現れるのがいわゆる普及品の仏壇です。
店頭で並んでいる時はわかりませんが、数年経つと違いがハッキリ出てきます。
逆に、高額な仏壇は職人の手間が惜しみなく掛けられています。
欄間一つ見ても、手作業で丁寧に彫り込まれたものか、機械で粗削りをして工業的な流れ作業で作られたものかで違いが出ます。
パッとみただけではわかりませんが、よく見比べてみると、その細部の違いがわかります。
【材料】が違う(唐木仏壇の場合)
唐木仏壇の場合、金仏壇よりもその違いがわかりません。
見た目は黒檀や紫檀なのですが、すべての材料に唐木材を使うと高額になりすぎてしまいます。
実は、芯となる天然木材に5~7ミリの唐木板を貼り付けています。
前面だけのものや(前練り)、横側にも貼り付けたもの(三方練り)、全てに貼った(四方練り)があり、唐木の板を多く使うほど高額になります。
板の厚みをなるべく薄くしてあったり、木目を印刷した紙を貼ってあるものまであります。
見た目だけではどれなのかわかりません。
見た目が一緒なら、安いほうがいい、という方もいるかと思います。
確かに買った当初はそれでいいのですが、数年数十年が経つと、安い仏壇にはそれなりの変化が出てきます。
・印刷紙が剥がれる
・日焼けによる退色
この2点が目立ってきます。
このようなデメリットを納得した上で買うのならいいのですが、知らずに買って後で後悔することになっては悔やむに悔やみきれません。
購入時にこのようなデメリットを説明する仏壇店は少ないです。
優良仏壇店なら進んて説明してくれますが、普通こちらからなぜ安いのか?って聞きにくいですよね。
いい仏壇店の探し方をまとめてあるので、仏壇店を覗く前に知っておくといいと思います。
仏壇が必要になるときはいつか必ず来ます。 身近な方が亡くなってから探す方がほとんどかと思いますが、実際そうなってみると、日々時間に追われなかなか仏壇を比較する「時間と心の余裕」がありません。 […]
ただ、安いのでいいという方もいるでしょう。
安い仏壇にもいい点はあるので、「絶対安いものは買ってはいけない」なんて言いません。
数年しか置かないから、と割り切って買うのなら安いものでいいと思います。
仏壇を見分けるコツ
品質表示をみる
この方法なら誰でもその違いがわかるでしょう。
多くの仏壇店が加盟している全日本宗教用具協同組合では、表示に関するルールを定めています。
原産国について
国産と表示ができる金仏壇
1.)全ての製造工程を国内でしたもの
2.)木地、塗り、金箔、飾り金具、蒔絵のうち1工程が国内でしたもの
国産と表示ができる唐木仏壇
1.)全ての製造工程を国内でしたもの
2.)一部素材が海外より輸入したもの(木材、合板杢、木彫)であっても国内で製造加工されたもの
以上の条件どちらかを満たせば[国産]と表示していいというルールがあります。
イメージでは、国産の材料で製造まで全てが日本国内でできたものしか国産と言わないと思ってしまいますが、意外とそうでもないことがわかります。
まぁ、金仏壇はまだしも、唐木の木材を国内て調達することはまず不可能な時代になりました。
原材料を知っておく
金仏壇ではヒノキ、マツ、スギなどの木材やそれ以外の天然木材。
安い仏壇ですと合板やMDFと表示してあります。
唐木仏壇になると、全てを同材料で作られている[無垢]、唐木の厚板を芯材に貼った[厚板貼り(練りとも言う)]、0.1〜0.8ミリの薄い板を貼った[薄板貼り]、さらに安いものだと[〜調プリント]、と言って唐木の模様を印刷した紙が貼ってあります。
さらに[着色]と言って木材に直接塗装したものもあります。
どういった表記だと高く、逆に安いものの表記はどうなるのか具体的に書くとこのようになります。
金仏壇の高額のものは、
国産・ヒノキ材・漆仕上げ・本金粉本金箔1号
安いものは、
海外製・MDF・ウレタン仕上げ・金塗装
唐木仏壇の場合はこうです。
高額のものは、
国産・無垢(無垢板を寄木にしたもの)・主芯材天然木
安いものは、
海外製・〇〇調プリント・主芯材MDF
何度も見に行く
時間も手間も掛かるので実用的とは言えませんが、仏壇店に足を運び説明を聞きながら自分の目を養うと、仏壇本来の価値がわかってきます。
なので表示価格を見れば、割高なのか割安なのかがわかるようになり、仏壇購入のときに後悔したり騙されたと思うことはなくなります。
なぜ仏壇は高額なのか?
仏壇が身近になく、無くてもいいと考えている人には余計高額と感じるようです。
仏壇が高額な理由は、多くの職人が関わり、それぞれに手間が掛けられているからです。
仏壇は実用的な家具のようでもありますが、一方で伝統工芸としての一面も持ち合わせています。
仏壇は分業体制をとっています。
金仏壇では[七職]と呼ばれる、
【木地師】【塗師】【宮殿師】【彫刻師】【蒔絵師】【金箔押師】【錺金具師】
のそれぞれの職人が技術の粋を集めて仏壇を作っています。
昔は国内のみの生産だったので価格相場も変わりませんでしたが、安い労働力の海外で工業的に作られるようになると、国産と海外産の価格に大きな差が出てきてしまいました。
それでも要所の部品は手作業のことが多いので、いくら海外製といえども高額になっています。
元々仏壇はお寺を模して作られています。
仏様を安置するので、浄土をイメージして形が考えられています。
昔の人々は今の我々より信心深い方が多かったので、仏壇製造に手を抜くなんてできなかったのかもしれません。
浄土のイメージを家の中に再現するためには、それなりの手間を掛けました。
なので、今も仏壇は高額のものが多いのです。
しかし、家具調仏壇、モダン仏壇と、価格の安価なものも生まれています。
まとめ
見た目はほとんど変わらないのに、桁が1つ違うこともある仏壇。
でも、ほとんど変わらないことはなく、よく見ればかなり違うことがわかってきます。
その目が普段の生活では養われていないので、同じに見えてしまうのです。
車に興味がない人が、どの車も同じに見えるのと同じ原理です。
あなたが仏壇をどう考えるかで買い方も変わってきます。
何年使うつもりか、ゆくゆくは買い替えるのか、お洗濯をして次の世代に残すのか。
仏壇の価値はあなたが決めるものでもあるのです。