位牌を作ったことがある方は見た覚えがあると思いますが、亡くなった方の年齢の上に「享年」または「行年」という文字があります。
これは一体なにか、知っていますか?
どんな意味があるのでしょう?
質問.「享年」と「行年」の違いは?
答え.
拍子抜けする回答で、ズッコケてしまいそうですが、ほんとうに使い分ける意味はありません。
では、なぜ「享」と「行」があるのでしょう?
一説ですが「享」は、この世に生を受けた年数という意味を表しているそうです。
以前読んだ「宗教工芸新聞」には、この様に書いてありました。
国立国語研究所の「言葉に関するFAQ」によれば享年と行年の差は全くなく、どちらを使っても構わない。
本来は「享年いくつ」と年数で止めるのが伝統のようです。
ただし「享年〇歳」の用例は近世の文語平叙文にも出てきます(曲亭馬琴『椿説弓張月』1807~1811)ので、現代日本語の口語文ではなおさらのこと、使ってとがめられるほど大きな間違いとは言えないでしょう。
告別式などで書いたり発言したりする場合、「享年〇」という言い方は口語体や話し言葉としては強すぎて馴染まないので、「享年〇歳」ということもありうることでしょう。
古い文献ではどうであろうか。
中国の『宋高僧傅』(988)には数多くの高僧の生涯が記されているが、亡くなった年齢に関しては全てが「享年五十」「享年七十」などの用法だ。
同じく中国の『仏祖統紀』(1269)も「享年六十有九」といった語用法である。
日本ではどうであろう。
幕末に出版された『冬椿集乾』の中には「以弘化乙巳十一月廿八日没す享年八十有四とあり、やはりここでも享年。
つまり、漢文上では「享年○○」と記すのが習いであったことが分かる。
行年という用法はどうであろうか。
大蔵経の中には「行年」は見えない。
日本の典籍を見ると、『誹諧をたまき網目』(1692)には「蕉門末弟夢中庵笠翁行年八十有二」とある一方で、明暦年間(1655~1657)の『因果物語』には「行年七十七歳臈三十六年也」という用法が見える。
つまり、江戸時代には享年も行年も同じように使われ、行年の場合には、「行年〇歳」と使われることもあったということだ。
言うまでもなく江戸時代には満年齢はなく、数え年のみである。
出典「宗教工芸新聞」より一部抜粋
でも、
じっさいに位牌を依頼する場合、先祖代々の位牌は「享年」なのに今回だけなぜか「行年」では、なんだか間違っているみたいで嫌ですよね。
また、お墓がある場合、お墓に彫ってある字の方に合わせなくていいのか不安になると思います。
そこで、具体的にどっちにしたらいいか、ここでルールを決めてしまいましょう。
➀.先祖の位牌があればそれに倣う。
②.初めての位牌なら、お寺からもらった戒名に書いてある通りにする。
③.享年も行年も付けず「○○歳」としてしまう。
①の解説「先祖の位牌があればそれに倣う」
これが実質的で、間違いない答えです。
もしお寺からもらった戒名に書いてあるものと先祖の位牌と違った場合は、その旨をお寺に伝え、位牌に合わせていいか一言連絡しておきます。
たいていは「そちらに合わせていいですよ」と言われるでしょう。
前回、位牌の大きさや種類を検討し、間違いないものを選んでいただけたかと思います。まだ選んでいないという方はこちらから読んでください。位牌を初めて選ぶ時の注意点などを掲載しています。[sitecard subtitle=初めての位[…]
②の解説「初めての位牌なら、お寺からもらった戒名に書いてある通りにする」
位牌を作るのが初めてなら、特に気にせずお寺からもらった用紙(中陰表)に書いてある通りにしておけば問題ありません。
こんな用紙がもらえます↓。
そして、この紙を持って仏壇店に行くと、どうしたらいいか色々アドバイスをもらえます。
例えば、
「仏壇があるなら、中に入っている位牌と同じ形にした方がいいですよ。」
「初めての事なら、仏壇を決めてからの方がいいでしょう。」
「宗派によって位牌を使う、使わないがあります。」
仏壇店の店員やオーナーは基本親切な人が多いので、安心しましょう。
ぼったくりとかは、このご時世ほぼありません。(店を構えていることが前提)
詳しくはコチラで↓
仏壇が必要になるときはいつか必ず来ます。 身近な方が亡くなってから探す方がほとんどかと思いますが、実際そうなってみると、日々時間に追われなかなか仏壇を比較する「時間と心の余裕」がありません。 […]
③の解説「享年も行年も付けず「○○歳」としてしまう」
もういっそのこと、「享年」も「行年」もつけないという手もあります。
『つけない』場合は満年齢にしたほうが、誤解がないのでいいでしょう。
【満○○歳】と『満』をいれるとよりわかりやすいです。
また、絶対に年齢を入れなきゃいけないこともないので、年齢を入れない方もたまにいます。
実は「年齢」はあくまで生きている人の覚え書き程度で、絶対必要なのは戒名と俗名と命日です。
〇国産と外国製があると聞いたけど、どう違うの?〇なんで値段がこうも違うんだろう〇外国で作った位牌はちょっと・・・品質が・・・・・〇結局、どっちを買ったほうがいいのか教えて!仏壇店に位牌を買いにいった方の多[…]
「享年と行年」についてのまとめ
「享年」と「行年」の違いについて解説ましたが、わかっていただけたでしょうか。
結論としては、
・・・くらいに覚えておけば、失敗することはありません。
では次に、「数え年」と「満年齢」の違いについて解説していきます。
「数え年」と「満年齢」のちがい
先程は「享年」と「行年」のことを話しましたが、このどちらも「数え年」で計算しています。
私の経験ですと、9割以上の方が位牌に書く年齢は数え年にしています。
つまり、
なぜ9割以上が数え年にしているかというと、お寺からもらい受ける戒名を書いた用紙には数え年で記入してあるからです。
では、その「数え年」とはそもそも何なのでしょうか?
わかりやすく説明していきます。
知ってるよ、と言う方は読み飛ばして次の章へお願いします。
数え年とは?
という数え方です。
なじみがなく、わかりにくいと思うので、例をだして解説します。
2021年8月8日生まれの場合、
西暦 | 満年齢 (誕生日前) | 満年齢 (誕生日後) | 数え年 |
2021年 | 元気に生まれてね | オギャ~ | 生まれたら「1才」 |
2022年 | 0才○○ヵ月 | 満1才 | 2022/1/1で「2才」 |
2023年 | 満1才 | 満2才 | 2023/1/1で「3才」 |
2024年 | 満2才 | 満3才 | 2024/1/1で「4才」 |
2025年 | 満3才 | 満4才 | 2025/1/1で「5才」 |
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仮に、2024年10月1日に死亡したとしたら、誕生日を過ぎているので満年齢は3歳ですが、数え年では4歳です。➡享年4歳
もし2024年4月1日に死亡したとしたら、誕生日前なので、満年齢は2歳ですが、「満年齢+2歳」が数え年となり、数え年では同じ4歳になります。➡享年4歳
たとえ話もよくわからない!、読むのもめんどくさい!という方にはもう、これだけ知っておいてください↓。
数え年の一番簡単な計算式!
位牌の多くは数え年で年齢を書くので、故人の誕生日を確認して年齢を入れる必要があります。
満年齢とは?
現在私たちが『即答できる年齢』のことです。
【数え年と満年齢】の歴史的な移り変わり
今では、満年齢(今いくつ?)が一般的な年齢の数え方になっています。
では、なんで数え年というものがあるのか知っていますか?
実は、満年齢で計算するようになったのは、つい最近なんです。
具体的に言うと、明治6年(1873年)に政府が変えました。
それまでは、太陰暦を基準にしていたのですが、1873年に太陽暦(今の暦の数え方)にしたと同時に満年齢にしたそうです。
混乱するといけないので、しばらくは数え年も満年齢も認められていましたが、明治35年(1902年)には、満年齢のみを使うよう定められました。
しかし、戦後の昭和25年(1950年)にはどちらも使っていいとなりましたが、数え年を使う場合はちゃんとそのことを明示しなければならないと注意書きがされています。
また、本当かウソかわかりませんが、満年齢にした理由は、
「数え年より年齢を若く数えるため、気持ちが明るくなる」という理由だとか。
「数え年と満年齢」のまとめ
最近使われることがない「数え年」は位牌の年齢を入れる時に必要になります。
満年齢は、現在使われている年齢の数え方です。
位牌を作る場合、数え年を記入する方が9割以上です。
なので、こだわりがなければ数え年が無難です。
計算方法は、